低血糖

要点

  ①意識障害の患者さんを見たら、最初に簡易血糖チェックで低血糖を除外!
  ②すべての神経学的異常所見に対して、必ず血糖値を確認!
  ③敗血症や副腎不全に合併する低血糖に注意!疑ったら血液培養2セット!

総論

血糖値が40-50mg/dl以下で、低血糖による諸症状を呈した病態。
血糖値が急速50-70mg/dlに低下すると主に交感神経緊張症状を呈し、50mg/dl以下では主に中枢神経症状を呈する。
また、通常の血糖値が高値の場合、血糖値が一般的に正常範囲内であっても低血糖症状を示す(比較的低血糖)。

低血糖は意識障害や気分不良の原因として瞬時に診断、治療が出来る病態であるにもかかわらず、
うっかり確認し忘れることもあり、頭部CT検査などを優先して対応が後手に回ってしまうこともある。
どんなときも、意識障害へのfirst stepは血糖チェックから確認する癖をつけることが重要である。

低血糖症状の「はひふへほ」
は:腹減った
ひ:冷汗
ふ:震える
へ:変にどきどき
ほ:放っておくと痙攣、死亡

主訴

気分不良、冷汗、意識障害、片麻痺、呂律難、痙攣、めまいなど

General & Vital signs

一見して脳血管障害を疑うようなsickな患者から、不定愁訴の印象の患者までGeneralは様々。
重症になると交感神経刺激症状として、全身の冷汗、末梢の湿潤・冷感がみられる
また、低血糖によるカテコラミンリリースで脈圧の大きい高血圧が見られる。

鑑別疾患

脳血管障害、敗血症、インスリノーマ、悪性腫瘍、肝硬変・肝不全、副腎不全、薬物・アルコールなど

医療面接・診察

医療面接
  現病歴:低血糖に陥った原因の検索、経過時間の確認
  既往歴:糖尿病の有無(内服薬やインスリン使用の有無も確認)、胃の手術歴(ダンピング症候群)
  内服薬:糖尿病治療薬、Ⅰ群抗不整脈薬、抗うつ薬、鎮痛薬、β-blockerなど(低血糖を誘発しうる薬剤)
  生活歴:最近の食事の状況、飲酒の程度

検査

簡易血糖:5秒で診断可能
血液ガス:多くの血液ガス測定器で血糖測定も可能
血液検査:CBC、生化、凝固、アンモニア、HbA1c、ビタミンB1など(その他の意識障害の原因検索など)
その他:腹部エコー、頭部CT、腹部CT、頭部MRIなど(その他の意識障害の原因検索などで必要な場合)

ビタミンB1欠乏症
ビタミンB1が実際に低値であれば、入院後にアリナミン®F 5A 1日3回 3日間治療を行う。

治療

①急速補正
 50%ブドウ糖(20ml/A)2A ゆっくり静注(血管痛に注意)
②慢性アルコール中毒や低栄養が疑われる場合
 アリナミン®F(ビタミンB1)2〜5A iv(Wernicke脳症予防目的)
③点滴(メイン)
 5%ブドウ糖液がbetter(ハルトマン®や生理食塩水にはブドウ糖が含まれていない)
※30分おきに血糖チェックし、低血糖遷延がないかを確認する
※意識が改善したら、できるだけジュースなどの経口摂取が望ましい

Whipple三徴
低血糖の特徴として、以下の3徴候がある。
・症状:空腹時あるいは運動後に低血糖症状を起こす
・血糖:血糖値が40mg/dl以下である
・改善:ブドウ糖投与により症状が改善する

Discharge or Admission Criteria

敗血症副腎不全などに起因するものであれば、原疾患の治療のために入院が必要。
  →致死的であり、まずはこの2つをルールアウト、疑うようであれば血液培養2セット
・単純に糖尿病関連であれば、かかりつけに紹介状を作成。
  →今後フォロー、内服やインスリンの調整を依頼する
・経口血糖降下薬(特に長時間作用型のSU製剤)は効果が遷延するため、帰宅判断は慎重に。

診療上のポイント・アドバイス

・低血糖遷延時間が長ければ、低血糖脳症による不可逆的機能障害をきたすこともある。
・ブドウ糖投与後も回復が見られないようであれば、他の意識障害の原因検索を行うこと。
大切なのは「なぜ低血糖になったのか?」を考えること。
・原因に応じて患者および家族に教育を。必要があればかかりつけに紹介状を作成する。

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