急性膵炎

要点

  ①症状・血液検査・画像所見から急性膵炎を診断する!
  ②膵炎と診断後、腹部造影CTを撮影し、重症度を評価する!
  ③絶飲食・大量補液・鎮痛は必須!必要に応じて、抗菌薬・蛋白分解酵素阻害薬も考慮!

Points
・膵炎と診断したならできるだけ早く造影CT、鎮痛を行うこと!!
・重症化して急性壊死性膵炎などに陥ることもあり、迅速かつ慎重な対応が必要となる疾患!!

総論

膵炎とは、様々な原因で膵酵素が活性化されて膵組織を自己消化する病態。
原因としてはアルコール性と胆石性の二つが代表的だが、原因はっきりしない特発性も多い。

主訴

突然発症の上腹部痛や背部痛、嘔気嘔吐

General & Vital signs

多くの場合は苦悶様表情。
前屈位で歩く、もしくは歩けないことが多い。
頻脈を伴い、重症の場合はショック状態の場合もある。

鑑別疾患

胆石発作、急性胆嚢炎、急性胃腸炎、虫垂炎、腸間膜動脈閉塞症、急性大動脈解離、ACSなど。
特にアミラーゼ高値となる疾患の鑑別として、消化管穿孔を絶対に見逃さないことが重要。
その他に腎不全、イレウス、熱傷、マクロアミラーゼ血症、神経性無食欲症なども鑑別にあがる。

医療面接・診察

医療面接
  現病歴:OPQRSTで急性膵炎の特徴の有無を確認
  既往歴(胆石や高脂血症の有無など)、生活歴(飲酒歴が特に重要)、
  内服薬(抗凝固薬の有無)
診察
  圧痛部位、反跳痛や筋性防御の有無
  重症例で出現する出血斑の確認(例:Cullen sign(臍周囲)、Grey-Turner sign(左側腹部)など)

急性膵炎の特徴の例
・突然発症の腹痛・背部痛、
・chest-knee position(胸膝位)で疼痛の改善、
・帯状の疼痛域、嘔気・嘔吐などの随伴症状(90%)など

検査

血液検査:CBC、肝酵素、胆道系酵素(ALP、γGTP)、腎機能、電解質、CRP、凝固、膵酵素(P-AMY、リパーゼ)
     ※重症度を評価するために、LDH、Ca、Albも要確認!
血液ガス:BE、PaO2など
腹部エコー:膵周囲の炎症像、膵腫大、腹水、胆道系疾患(総胆管結石、総胆管拡張)の有無を評価
      ※大動脈瘤を合併することもあるため、血管系も要確認!
腹部CT:単純・造影(二相:動脈相+門脈相)で撮影する(胆石・膵石を評価するため単純CTの撮影も必要)
    ・胆石、膵石の嵌頓の有無、さらに門脈内血栓、仮性のう胞、のう胞内出血
    ・膵臓の造影不良域の有無(壊死を示唆しており、重症度判定において特に重要)
    ・膵臓周囲への炎症の波及像
    ※膵の造影不良域および炎症の膵外進展度から造影CT Gradeを判定(Grade 2以上は重症)

急性膵炎の診断基準
以下の3項目のうち2項目を満たし、他の膵疾患・急性腹症を除外したもの
 ①症状:上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある
 ②血液:血中または尿中に膵酵素の上昇がある
 ③画像:超音波、CT、またはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある

急性膵炎の重症度判定
A.予後因子(各1点)
 ①Base Excess≦-3mEq/L、又はショック(sBP≦80mmHg)
 ②PaO2≦60mmHg(RA)、又は呼吸不全(人工呼吸管理が必要)
 ③BUN≧40mg/dL(or Cre≧2mg/dL)、又は、乏尿(輸液後も1日尿量が400ml以下)
 ④LDH≧基準値上限の2倍
 ⑤血小板数≦10万/mm3
 ⑥総Ca≦7.5mg/dL
 ⑦CRP≧15mg/dL
 ⑧SIRS診断基準における陽性項目数≧3
 ⑨年齢≧70歳
B.造影CT grade 名称未設定A.予後因子が3点以上、またはB.造影CT grade 2以上の場合は重症とする。

治療

①絶飲食
②大量輸液
 軽症〜中等症:細胞外液2〜3L/day(80〜120mL/hr)
 重症:細胞外液3〜6L/day(120〜250mL/hr) ※重症例ではCV挿入の適応あり
 ※尿量 0.5mL/kg/hr以上の維持を目標として輸液量を調節する
③抗菌薬
 軽症:不要
 中等症(胆管炎合併例など):CPZ/SBT(セフォセフ®)1g 1日2回
 重症(壊死性膵炎など):MEPM(メロペン®)0.5〜1.0g 1日3回
④鎮痛薬
 レペタン®(0.2mg/A) 0.1~0.2mg静注 or ソセゴン®(7.5mg/Aまたは15mg/A) 7.5mg~15mg静注
  ・激しい腹痛から、呼吸・循環機能に障害をきたすことがあるため、十分な除痛を行う
  ・軽度の疼痛ではNSAIDsも使用できるが、重症例やプレショック時の使用は禁忌
⑤蛋白分解酵素阻害薬
 ブイペル®(10mg/V) 6V + 5%ブドウ糖 500ml div(20ml/h)
※場合によっては、ミラクリッド®やPPIの静注や、蛋白分解酵素阻害薬や抗菌薬の膵局所動注療法、
 CHDF、外科的加療なども検討される。

栄養療法とアルコール離脱
【栄養療法】
腸蠕動がなくても、イレウスや腸管虚血に注意しながら、診断後48時間以内に経腸栄養を少量から開始する。

【アルコール離脱】
原因がアルコール性と考えられる場合は、アルコール離脱症状の予防(セルシン®静注・内服)も検討する。
 ・予防:セルシン®(ジアゼパム)1回5〜10mg 1日4回(約1週間かけて徐々に減量)
 ・治療:セルシン®(ジアゼパム)1回5〜10mg 1日6回(1日4回に減量後、内服に切り替える)

Discharge or Admission Criteria

原則入院

診療上のポイント・アドバイス

・基本的に全例消化器内科にコンサルト。胆石性膵炎ならば、緊急ERCPが必要。
・反復する軽症のアルコール性膵炎の場合、翌朝のコンサルト可。
・膵炎の成因(アルコール性、胆石性など)と重症度評価と治療方針をおさえる。

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