顔面神経麻痺

要点

  ①脳梗塞と末梢性顔面神経麻痺の鑑別が非常に重要!
  ②Ramsay-Hunt症候群=帯状疱疹ウイルスが原因の顔面神経麻痺(重度の疼痛、耳道や咽頭の水疱あり)
  ③Bell麻痺=原因不明の顔面神経麻痺(末梢性顔面神経麻痺の原因として最多)

Points
・顔面神経麻痺の患者を診た時は、神経障害が末梢性障害か中枢性障害か鑑別する。
・中枢性障害を除外することが重要。

総論

顔面神経麻痺では、顔面神経の機能障害により顔面の表情筋、あぶみ骨、舌の前2/3の味覚、
副交感神経として涙腺・唾液腺の機能障害が発現する。
ほとんどの患者は顔面の麻痺を主訴に受診し、脳梗塞など中枢性疾患との鑑別が必要になる。
顔面神経麻痺なのか脳梗塞なのかで対応は全く異なるので、丁寧な診察を行う必要がある。
末梢性顔面神経麻痺の場合、原因のほとんどがBell麻痺(原因不明)である。

主訴

顔がゆがんでいる、片目がつむれなくなった、水を口に含むとこぼれてしまう、味がしない、目が乾く、など

General & Vital signs

バイタルは正常なことがほとんど。Generalもよい。

鑑別疾患

末梢性
  Bell麻痺(急性の末梢性顔面神経麻痺として最多)
  Ramsay-Hunt症候群(重度の疼痛や、耳道や咽頭の水疱あり)
  中耳炎(真珠腫性中耳炎)・耳下腺腫瘍・聴神経鞘腫(すべて緩徐進行)
  サルコイドーシス・ライム病・Guillain-Barre症候群(すべて両側性の顔面神経麻痺)
  その他(糖尿病性神経障害、外傷による側頭骨骨折、耳下腺周囲の手術後)
中枢性
  脳血管障害(脳梗塞、脳出血)、脳腫瘍(聴神経腫瘍)

聴神経鞘腫
聴神経鞘腫では、三叉神経痛、嚥下困難、嗄声、複視が出現することもある。

医療面接・診察

医療面接
  症状のOPQRST:脳血管障害との鑑別 ※反復性がある場合、サルコイドーシス等の神経障害疾患の疑いが強まる
  既往歴:糖尿病、脳梗塞、水痘罹患、中耳炎、外傷、耳鼻科手術歴など
診察
  脳神経診察:末梢性と中枢性の鑑別、障害部位の推定
  額のしわ寄せ:できなければ末梢性、できれば中枢性
  外耳道:Ramsay-Hunt症候群の症状を確認

額のしわ寄せ
末梢性:
半側顔面で麻痺が明らかで、顔面の上部も下部も異常所見あり。
麻痺側の聴覚が過敏となり音が大きく聴こえ、麻痺側の涙腺・唾液腺の分泌低下も認める。

中枢性:
下部顔面の麻痺(口角下垂)に比べて、顔面上部の麻痺(額のしわ寄せ)は軽度。
Barre徴候や構音障害も明らかに異常を認めることが多い。

検査

頭部CT/MRI:中枢性を否定できないとき
血液検査:CBC、生化、凝固(内科疾患のスクリーニング)
胸部Xp:肺門部リンパ節腫脹の有無などを確認

治療

①プレドニン
 重症例: 1mg/kg/day(60mg/day) 5~7日間→その後1週間で漸減・中止へ
 中等症〜軽症:0.5mg/kg/day(30mg/day) 5〜7日間→その後1週間で漸減・中止へ
 ※糖尿病患者は要注意!(耳鼻科Drと相談後に投与量を決定することが望ましい)
②アシクロビル
 Ramsay-Hunt症候群あり:1000mg/day(バルトレックス®500mg錠 2T/2x)
 Ramsay-Hunt症候群なし:3000mg/day(バルトレックス®500mg錠 6T/3x)
 ※腎機能注意!(腎機能に応じて減量必須!)
③ヒアルロン眼軟膏
 閉眼困難な場合に兎眼予防目的に処方。
④ファモチジン
 ステロイド性胃潰瘍・ストレス潰瘍予防目的に処方。(例:ファモチジン20mg  2T/2x)

Discharge or Admission Criteria

入院加療は基本的には必要なし。
ただし入院加療が望ましい場合もあり、帰宅させるとしても早めに耳鼻科再診を予約する。

診療上のポイント・アドバイス

顔面神経麻痺の症状としては以下の6つが重要。
①顔面表情筋の障害、②角膜反射低下、③唾液分泌低下、④味覚低下、⑤聴覚過敏、⑥涙液分泌低下

顔面神経麻痺の重症度評価:柳原法(40点法)
名称未設定
軽症:≧20点 中等症:10〜18点 重症:≦8点

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