NSTE-ACS(NSTEMI/UAP)

要点

  ①心電図変化が無くても、心エコー・血液検査からACSを疑ったら、直ちに循環器内科コール!
  ②症状からACSを疑う場合、1回目の検査で異常なくても2時間後に心電図・血液検査を再検!
  ③TIMI risk scoreでリスク評価し、リスクに応じて適切な対応を行う。

Points
・NSTE-ACSは心電図所見だけで判断できない。
症状の『頻度・強さ・持続時間』の3項目から安定か不安定狭心症かを判断する。
2時間後の心電図・血液検査の再検とTIMI risk scoreの評価が重要。

総論

狭心症は臨床経過から安定狭心症と不安定狭心症(UAP)に分類される。
安定狭心症は少なくとも1ヶ月以上症状が安定しており、ある一定以上の労作によって生じる一過性の胸痛・胸部不快感を自覚するものと定義される。
一方、不安定狭心症は狭心症発作の頻度・痛み・持続時間が増悪してくるもので、心筋梗塞に移行する可能性が高く急性冠症候群(ACS)として扱われる。
Door-To-Balloon timeの目標時間は、STEMIが90分以内である一方、NSTE-ACSは24時間以内である。

主訴

胸痛・胸部圧迫感・胸部絞扼感・胸部不快感、放散痛(左肩痛・下顎痛・歯痛など)、
随伴症状(呼吸困難、めまい、意識消失、嘔気、冷汗)など

General & Vital signs

全身冷汗著明で胸部圧迫感が明らかな場合から無症状の場合まで様々

鑑別疾患

心血管系疾患(急性大動脈解離、肺動脈塞栓症、たこつぼ型心筋症、心筋炎、心膜炎)、
肺疾患(気胸、胸膜炎)、消化器疾患(上部消化管潰瘍・穿孔、胃食道逆流症、食道破裂)など

医療面接・診察

医療面接
  以下の3項目を認めると、NSTE-ACS(NSTEMI / UAP)の可能性が高まる。
   ①胸痛の持続時間の延長(ときに15分以上)
   ②痛みの増強
   ③狭心症発作の頻度の増加(3回/日以上)

検査

①心電図
②血液検査(CK、CK-MB、高感度トロポニンなど)
 有意な所見を認めなくても症状からACSを疑う場合は、2時間後に心電図・血液検査再検!
 ※心電図変化があっても症状がなく、1回目の血液検査でトロポニン<5ng/mLなら2時間後の再検不要。
③心エコー
④胸部Xp(その他の鑑別疾患の除外目的)

治療

①高リスク群
 STEMIに準じた対応(バイアスピリン®200mg+エフィエント®20mg+ヘパリン3000単位など)
②中リスク群
 循環器内科にコンサルトし入院(例:バイアスピリン®100mg+ヘパリン持続静注)
 翌朝の血液検査・心電図フォロー必須
③低リスク群
 循環器内科の外来予約(低リスク群でも心配なときは、循環器内科コンサルト!)
 処方薬:ニトロペン®0.3mg錠 頓用(胸痛時1錠舌下投与) ※頓用処方時は舌下投与!

Discharge or Admission Criteria

TIMI risk scoreで中〜高リスク群は入院。低リスク群は基本的に外来フォローで良い。
ただし、低リスク群でも心配なときは、循環器内科コンサルトし対応を検討する。

TIMI risk score
NSTEMIやUAPに対して、各項目1点で合計7点でリスク評価する。
 ①65歳以上
 ②冠動脈疾患家族歴、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、現在も喫煙中、のうち3つ以上当てはまる
 ③50%以上の冠動脈狭窄の既往
 ④ST偏位あり
 ⑤24時間以内に2回以上の狭心症状あり
 ⑥7日以内にアスピリンを使用している
 ⑦血清心筋マーカー(CK-MBまたは心筋特異的トロポニン)陽性
・0-2点:低リスク(→外来フォロー)
・3-4点:中リスク(→入院)
・5-7点:高リスク(→早期侵襲的治療介入:24時間以内にCAG/PCI)

診療上のポイント・アドバイス

NSTE-ACSはSTEMIのように心電図だけでコンサルトすることは難しい。
心エコーや血液検査の所見、TIMI risk scoreの結果に応じて、循環器内科にコンサルトする。

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