急性大動脈解離
①早期診断し、できるだけ早く心臓血管外科へコンサルトする。
②初期治療の基本は、鎮痛(モルヒネorフェンタニル)と降圧(ニスタジール)管理!
③バイタルサインには常に気を配る!(高率に心停止にするため注意!)
急性大動脈解離は、大動脈壁が中膜のレベルで二層に剥離し亀裂が生じる致死的胸痛の一つである。
解離が進展すると心タンポナーデ、大動脈破裂、AR、分岐動脈閉塞、脳梗塞やDICを合併する。
疑ったら、迅速に適切な対応・検査を進めていく。
最も多いのは胸背部痛。
しかし、解離が進展する場所により様々な症状を呈する。
失神、対麻痺、片麻痺(特に左片麻痺)、頭痛、呼吸困難、腹痛、間歇性跛行など。
Sickな状態で搬送されることが多い。
SBP≧150mmHgなのは半数のみで、Stanford A型では1/4の症例でSBP≦100mmHgである。
脈拍欠損や血圧左右差(≧20mmhg)は1/3の症例でしか見られないが、診断に有用。
致死的胸痛:急性心筋梗塞、緊張性気胸、肺塞栓、心タンポナーデ、食道破裂
他に、腹部大動脈瘤、胆石、尿管結石、腰椎症、急性腹症など
見落とし注意!
急性心筋梗塞や脳梗塞と診断した場合、必ずそれらの原因に大動脈解離が関与していないかエコーで確認すること!
大動脈解離の結果、急性心筋梗塞(特に右室梗塞)や脳梗塞(特に左片麻痺)をきたす場合がある!
医療面接
基本的に「突然」発症で、「裂けるような」「移動する」痛みが多い。
既往歴(高血圧の既往が重要。2/3の症例で高血圧の既往がある。)
リスク因子(Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群、先天性心疾患、梅毒感染など)
診察
ショックの5P(Pallor, Perspiration, Prostration, Pulselessness, Pulmonary insufficiency)
Beckの三徴(頸静脈怒張、血圧低下、心音低下) ※心タンポナーデの所見
拡張期灌水様雑音、大脈、速脈、Quincke徴候(爪床部の毛細血管拍動) ※大動脈閉鎖不全症の所見
四肢麻痺(Adamkiewicz動脈の虚血)
Caサイン
内膜石灰化が大動脈陰影外側から5mm以上内側に偏移していれば大動脈解離と考える。
単純CTでも同様の所見を確認することができる。
胸部Xp:上縦隔拡大、胸水貯留(血胸、反応性胸水)、Caサイン
心エコー:上行大動脈起始部の解離した内膜(flap)の有無の確認
合併症の確認(例: 急性心筋梗塞、心タンポナーデ、大動脈弁閉鎖不全症)
胸腹部造影CT:StanfordA(上行大動脈も巻き込む)、StanfordB(下行大動脈に限局)の分類
※脳梗塞様症状があれば、頭頸部造影CTも追加!腎機能関係なく造影必須!
心電図:急性心筋梗塞合併の有無を確認
血液検査:CBC、生化、凝固、感染症、血液型 ※立ち会い採血が望ましい!
(CK・CK-MB・トロポニン・Dダイマーを確認し、心筋梗塞や肺塞栓を鑑別!)
①大動脈解離を診断したら、すぐに心臓血管外科にコンサルト!
1)分類(Stanford分類)
2)Vital Signs(特に血圧)
3)意識レベル
4)心嚢液の有無
※Stanford Aなら手術、Stanford Bなら保存療法となる場合が多い(Stanford Bでも手術適応となることあり)
②降圧コントロール
目標:SBP 100〜120mmHg HR 60〜80回/分
薬剤:ニスタジール®(10mg/10mL/1A)5A+生食50mL
③疼痛コントロール
静注:塩酸モルヒネ(10mg/1mL/1A)+生食9mL 約2mLずつiv
フェンタニル(100μg/2mL/1A)+生食8mL 1〜3mLずつiv
持続:フェンタニル(500μg/10mL/1A)+生食40mL 約2mL/hr〜div
※塩酸モルヒネとソセゴン®は拮抗作用があるので2剤の併用は避ける。
入院。
心臓血管外科医が到着する前までに、一通りの検査を終えた状態にすることが望ましい。
ひどい頭痛+神経局所異常所見あり+頭部CTで脳出血無し
→大動脈解離、内頚・椎骨動脈解離、静動脈血栓症などを考えること!脳梗塞で「ひどい頭痛」は起こらない!!