細菌性髄膜炎

要点

  ①細菌性髄膜炎を考慮したら、すぐに血液培養2セット採取し抗生剤投与!
  ②頭部CTで頭蓋内病変を除外した後にルンバールを実施!
  ③意識障害や精神症状を伴う場合は、ヘルペス脳炎も考慮しアシクロビル検討!

Points
・細菌性髄膜炎の致死率は20%前後。
・高齢者、入院時の意識障害、髄液細胞数低値、肺炎球菌は予後不良因子。
・生存者の30%に後遺症を認めるため、患者・家族への説明が重要。

総論

急性発症である中枢神経系感染症には、細菌性髄膜炎、無菌性髄膜炎、脳炎、
脳膿瘍および硬膜下膿瘍、感染性血栓性静脈炎などが含まれる。
いずれも頭痛・発熱などの非特異的な臨床症状を初期に引き起こし、
その後、髄膜刺激徴候(項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候)と、
無菌性髄膜炎以外では意識状態の変化、局所神経症状、痙攣発作が出現する。

つまり、臨床症候のみではほかの急性髄膜(脳)炎との鑑別ができず、
細菌性髄膜炎を確定診断する決め手とはならない。
しかし、細菌性髄膜炎では治療開始までの時間が生命予後に大きく影響するため、
受診時の症状が軽微であったとしても、常に念頭に置き診療にあたることが最も重要である。
以下、細菌性髄膜炎について述べる。

主訴

頭痛(86%)、項部硬直(82%)、発熱(77%)、意識障害(66〜95%)
※成人で三徴(発熱・項部硬直・意識障害)を呈する典型例は44%程度

鑑別疾患

脳炎、脳膿瘍および硬膜下膿瘍、感染性血栓性静脈炎

医療面接・診察

医療面接
  ・初発症状は悪心・嘔吐を伴う頭痛と発熱。頭痛の程度が鍵
  ・「風邪でこんなにひどい頭痛は初めて…」が決め手
  ・初期より意識障害、精神症状(言うことがおかしい、同じ質問ばかり繰り返す)があり、
   非常にsickな印象の場合、脳炎の可能性が高い
  ・先行感染(中耳炎、副鼻腔炎など)の有無
  ・解熱・鎮痛薬で症状がマスクされている場合があるので注意
診察
  ・Jolt accentuation(感度97%:除外診断に有用とする報告あり)
  ・髄膜刺激症状(項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候)は必発ではない!
  ・四肢の点状出血、出血班(髄膜炎菌で有名だが、インフルエンザ桿菌、肺炎球菌でも認める)

髄膜刺激症状
・項部硬直:感度13〜42.9%、特異度68〜100%
・Kernig徴候:感度2〜25%、特異度75.2〜100
・Brudzinski徴候:感度2〜11.1%、特異度93.4〜98%

検査

血液検査・血液培養:CBC、生化、凝固、血液ガス
頭部CT:頭蓋内占拠性病変や脳ヘルニアの有無を確認
髄液検査・髄液培養(頭部CTで頭蓋内占拠性病変や脳ヘルニアが有れば禁忌!
 ※抗生剤投与から時間が経ちすぎると、検出感度が低下するため早めに腰椎穿刺を実施すること。

治療

①抗生剤(腎機能正常例 ※基本的にERでの初回投与時は腎機能正常用量で投与可)
  CTRX 2g×2/day(髄液移行性が良い)or MEPM2g×3/day(好中球減少・免疫不全患者など)
   +
  VCM 1g×2/day(PRSPもカバー) ※500mg×4/dayという投与方法もあり(目標トラフ値:15〜20)
   ±
  ABPC 2g×4/day(リステリアをカバー) ※乳幼児・50歳以上・免疫不全患者にはABPC必須!
 ※初期治療ではempiricに治療を開始し、培養結果に応じてde-escalationする!
②抗ウイルス薬
  アシクロビル(ゾビラックス®) 1回10mg/kg×3/day(1時間以上かけて投与)
 ※初期より意識障害・精神症状を認め、ヘルペス脳炎も考慮する場合に投与検討
③ステロイド
  デキサート® 0.15mg/kg×4/day ※抗生剤投与10〜20分前の投与が理想(4日間)
 ※最近ではステロイド投与を使用しないことを正当化する文献もあり、専門医の判断に委ねるのがベスト!
<参考>
 ・新生児を除く乳幼児・学童および成人に対して、副腎皮質ステロイド併用は推奨
 ・肺炎球菌が原因菌の場合、ステロイド併用治療の効果あり
 ・新生児および頭部外傷や外科的侵襲に併発した細菌性髄膜炎に対しては推奨されない

Discharge or Admission Criteria

原則入院

髄液検査
スクリーンショット 2018-03-27 0.07.27

細菌性髄膜炎の起因菌
スクリーンショット 2018-03-27 0.07.29

ヘルペス脳炎
辺縁系脳炎の代表疾患で本邦の急性ウイルス性脳炎の中でも最も頻度が高い。
頭痛・発熱に加えて、意識障害や精神症状を伴う場合はヘルペス脳炎の可能性も考慮する!

頭部MRI:側頭葉、島回、帯状回などの浮腫や・造影効果を伴う病巣。
髄液:単核球優位の細胞増加、蛋白上昇(糖は正常のことが多い)。
   HSVのDNAゲノム検出が可能。(発症から1週間以内であれば陽性率70〜80%)
   HSV抗体価は血清/髄液比が20以下のときを疑う。
 ※抗体価が判明するまで数日要するため、少しでも疑うならアシクロビル投与を行う!
治療:アシクロビル1回10mg/kg×3/day 1時間以上かけて点滴静注(14日間)

MICと肺炎球菌性髄膜炎
【MIC】
以下の3つの状況下では培養結果のMICの数値にも気を払う。
MICの値で第1選択薬のチョイスや投与期間に影響する!
①MRSA菌血症(VCM) ②連鎖球菌性感染性心内膜炎(PCG) ③肺炎球菌性髄膜炎(PCG、CTRX)

【肺炎球菌性髄膜炎】
①PCGとMIC
 ・MIC<0.1μg/mL:PCGまたはABPC(代替薬:CTRXまたはCTX)
 ・0.1<MIC<1.0μg/mL:CTRXまたはCTX(代替薬:CFPMまたはMEPM)
 ・MIC>2.0μg/mL:VCM+CTRXまたはVCM+CTX
②CTRXとMIC(PCGのMIC>2.0の場合)
 ・MIC<1.0μg/mL:VCM+CTRX+デキサメタゾン
 ・1.0<MIC<2.0μg/mL:VCM+CTRX+RFP+デキサメタゾン 
 ・MIC>2.0μg/mL:VCM+RFP+デキサメタゾン
 ※肺炎球菌性髄膜炎はPRSPの可能性が高く、CTRXのMICの値などを参考にVCMなどの併用も考慮する
 ※PCG耐性・CTRX耐性の肺炎球菌ではデキサメタゾンの使用を見合わせる場合あり

ページ上部へ戻る