高Na血症

要点

  ①高Na血症は飲水行動の行えない高齢者・小児で起こりやすい。
  ②細胞外液量・尿量・濃縮尿の有無を評価して原因検索を行う。
  ③Naの急速補正は禁忌!

Points
・血清Na値は水、Naの相対的バランスで考える。
 →細胞外液量が正常、減少、過多の3つの軸に鑑別していく。
高Na血症の原因精査として、頭蓋内病変の検索も重要。

総論

Na>145mEq/Lを高Na血症とする。
臨床的にはNa>150mEq/Lが問題となることが多い。
高Na血症は、低Na血症よりも頻度が非常に少ない。

血中Naはバソプレシンと水分(口渇中枢・飲水行動)のバランスにより調整される。
どちらかの異常により低Na血症または高Na血症を引き起こす。
飲水行動を自力で行えない高齢者や小児で高Na血症を認めることが多い。

主訴

意識錯乱、傾眠、昏睡、筋収縮、痙攣など
※一般にNa<160mEq/Lの高Na血症だけでは高度意識障害になることはまれ。
 高Na血症による浸透圧上昇により、神経細胞の細胞内脱水を引き起こし神経症状出現。

General & Vital signs

重症度によって様々。脱水時は頻脈・起立性低血圧を認める。
緩徐に進行すればほぼ無症状であり、急速に進行した場合は意識障害などを呈する。

医療面接・診察

医療面接
  現病歴:下痢、嘔吐症状の有無、炎天下での作業の有無
      患者状態(飲水行動が可能かどうか、メイロンや生食の過剰投与の有無など)
  内服薬:マンニトール、リチウムなど
  既往歴:頭蓋内病変の既往歴
診察
  脱水の評価(例:口腔内や腋窩の乾燥、眼球陥没の有無、皮膚ツルゴールの低下)
  腱反射亢進の有無

検査

血液検査:CBC、生化
尿検査:尿Na、尿K、尿Cl、尿Cre、尿BUN、Uosm
心エコー:volume評価(例:IVC径)など
頭部CT/MRI:意識障害や頭蓋内病変精査
その他:ミネラルコルチコイド、グルココルチコイドなど(基本的に入院後に精査)

脱水の評価
【FEUN】
脱水の評価としてEFNaを一般に使用するが、利尿薬内服患者ではEFNaが高値となりやすいためFEUNで評価する。
 FEUN 55〜65%:正常
 FEUN<35%以下:脱水

【尿中Cl】
脱水の評価としてEFNaを一般に使用するが、代謝性アルカローシスの場合、
循環血液量が少なくても、尿のNa排泄は多いことがあるため、尿中Clを参考にする。
 尿Cl<20:脱水、嘔吐、循環血液量減少
 尿Cl>20:輸液に反応しにくい病態
      A:原発性アルドステロン症症(低K血症)
      B:Bartter症候群 利尿薬
      C:Cushing症候群(高血糖など)
      D:decreased Mg(Gitelman症候群)

鑑別疾患

【Step1】細胞外液量の評価(医療面接・診察など)
 増加:医原性(例:生食・メイロン®などの過剰投与)
    ミネラルコルチコイド過剰(例:原発性アルドステロン症)
    グルココルチコイド過剰(例:Cushing病、異所性ACTH症候群)
 正常:中枢性尿崩症(下垂体からのADH分泌障害)
    腎性尿崩症(ADH反応性低下)       ※Uosm<300:完全尿崩症、300<Uosm<600:部分尿崩症
 低下:水分の喪失(腎性喪失or腎外性喪失→尿量・尿浸透圧確認【Step2】へ)

【Step2】尿量低下(500mL/day以下)、濃縮尿の有無(Uosm>600mOsm/L・尿Na<20)
 あり:腎外性喪失(例:発汗、熱傷、下痢、嘔吐)
 なし:腎性喪失 (例:利尿薬、腎疾患、浸透圧利尿、高血糖)

治療

細胞外液量低下時
  細胞外液の補充(200〜400ml/hr)
軽症例
  飲水可能→経口補液励行
  飲水不能→5%ブドウ糖液(20mL/hr)

※補足:12mEq/L/day(0.5mEq/L/hr)を超えない範囲で補正を行う。フロセミドivによるNa排泄促進も考慮。
※注意:低張液(例:5%ブドウ糖液)の急速静注は脳浮腫を引き起こすため禁忌!

尿崩症の治療
中枢性:デスモプレシン点鼻(1日1,2回点鼻)
腎性 :サイアザイド系利尿薬

診療上のポイント・アドバイス

重症例であれば、すぐに上級医に連絡。A-line挿入し集中治療管理が必要となる。

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