熱傷
①重症例はABCの安定化を中心とした全身管理!
②軽症例はリンデロン®VG軟膏+アズノール®軟膏+トレックス®ガーゼ!
③リンデロンは受傷3日目まで!処方時に多く処方しない!
Points
・ABCを素早く評価する
・熱傷の重症度を評価し、治療方針、Dispositionを決める
・気道と呼吸のチェックは継続して行う
ERで診る熱傷は、局所療法のみでよい場合から入院治療を必要とするものまで、重症度は様々である。
緊急性の高い病態が隠れていることもあり、受傷原因、部位、熱傷面積、深達度などの総合的評価が重要となる。
熱傷、呼吸困難など ※気道熱傷を疑う訴えに注意!
熱傷の程度や部位によりGeneralは様々。
気道熱傷による気道・呼吸の異常や、CO中毒による意識障害に注意する。
※乳幼児・小児の熱傷はネグレクトの可能性も考慮する!(例:背中のやけど)
※CO中毒では低酸素血症があってもSpO2は正常値を示すことがあるため注意!
医療面接
・受傷機転、熱傷原因、合併症(例:自動車事故、転落、爆発、雷撃などによる鈍的損傷)
how:火災、爆発、熱湯、化学物質、電撃傷など
why:事故、認知症など認知機能低下による火の不始末など
・体重(輸液量の参考になる)
診察
・気道熱傷を疑う所見(例:顔面熱傷、喘鳴、呼吸促迫、低酸素血症、鼻毛の焦げ、口腔内のスス付着)
・CO中毒を疑う所見(例:意識障害、局所神経症状、不整脈、心筋虚血)
・熱傷部位、深度、範囲の正確な把握。
深度:Ⅰ~Ⅲ度まで(最初の2~3日は進行することに注意)
面積:9の法則、5の法則、手掌法、Lund and Browderの式
重症度:Burn Index(BI)= Ⅲ度熱傷%+(1/2 × Ⅱ度熱傷面積) ※10~15以上で重症
予後推定因子
・年齢
・気道熱傷の有無
・Ⅲ度熱傷面積
・Burn Index
・自殺企図による受傷
・Revised Trauma Score
気道熱傷が疑わしい場合:
・血液ガス:気道熱傷を除外(CO-Hb)
・血液検査:CBC、生化、凝固 ※CKも確認
・尿検査:尿一般、尿沈渣 ※横紋筋融解症やコンパートメント症候群の合併の有無を確認
・心電図:CO中毒に伴う不整脈・心筋虚血を除外
・気管支鏡
・胸部Xp
①ABCの確保
A:気管挿管(気道熱傷・CO中毒が推定される場合) ※CO中毒には高濃度酸素投与が必要
B:酸素投与(肺水腫、拘束性換気障害(胸部熱傷)、ARDSの可能性を考慮)
C:輸液全開(成人は15%TBSA以上、小児は10%TBSA以上で初期輸液の実施が推奨される)
※ステロイド投与・予防的抗菌薬投与は推奨されない!
※ヘパリンとN-アセチルシステインのネブライザー吸入投与は考慮可能!
②熱傷の処置
流水による20分以上の冷却・洗浄
・氷水・氷での冷却は避ける!低体温に注意!消毒しない!水疱を破らない!
・3cm以上の水疱と可動性のある水疱は自壊するリスクが高いため、清潔環境で穿刺吸引
・自壊した水疱は水と石鹸で洗浄し、壊死した皮膚組織は丁寧に除去
・形成外科コンサルトを考慮
★Ⅰ~Ⅱ度熱傷 ※リンデロン®VG軟膏は3日間のみ!
・受傷後3日目まで: リンデロン®VG軟膏+アズノール®軟膏
・受傷後4日目以上: アズノール®軟膏 ※組織欠損が大きい場合、リフラップ®軟膏が推奨
※トレックス®ガーゼ(市販品:メロリン®ガーゼ)の貼付により、ガーゼ交換時の皮膚損傷を防げる!
※Ⅱ度熱傷ではフィブラストスプレー®が有効な症例もあるが形成外科/皮膚科外来に判断を委ねる。
★Ⅲ度熱傷 ※壊死組織(白色)は基本的に切除!
壊死組織融解:ブロメライン
感染予防(初期):ゲーベン®(滲出液少量時)、イソジンシュガーパスタ®・ユーパスタ®(滲出液多量時)
肉芽形成(中期):リフラップ®(滲出液少量時)、アクトシン®(滲出液多量時)
※ステロイドは引き締め作用あるため、 肉芽増殖期に使用考慮!
※熱傷初期は浸出液がかなり多いため、多めのガーゼで保護し四肢は患肢挙上!
Parkland法(Baxter法)
『4 × 熱傷面積(%)× 体重(kg)ml/day』を最初の8時間で半分、次の16時間で半分投与
※尿量は0.5mL/kg/hr以上が目標!
予防的抗菌薬投与
予防的抗菌薬投与で死亡率が低下したという報告がBMJから2010年に出ているが、
研究の質が低く、現時点では周術期以外の予防的抗菌薬投与は推奨されないと、著者自身が結論付けている
(BMJ. 2010 Feb 15;340:c241.)
熱傷の被覆材
滲出液が多い急性期の被覆材として、アクアセル®Agが優れている。
『アクアセル®Ag貼付+ガーゼ+包帯』
※ただし感染の可能性があれば被覆材ダメ!
・入院の基準(Artzの基準)
①Ⅰ度の面積が小児では≧10%、成人では≧15%
②Ⅲ度の面積≧2%
③顔面、手足、会陰などのDDB以上の熱傷
④気道熱傷、電撃傷、化学熱傷など
⑤骨折や軟部組織損傷を合併した熱傷
いずれかを満たすなら入院の検討が必要。
・軽症例は帰宅可能。熱傷の創部処置フォローのために形成外科/皮膚科の外来を予約する。
熱傷センターへの紹介基準(ABLS)
(Saffle J (ed): Practice Guidelines for Burn Care. Chicago, IL: American Burn Association, 2001.)