敗血症性ショック
①敗血症を疑ったら、血培2セット採取しすぐに抗菌薬を投与する
②細胞外液を全開投与しても血圧が安定しなければノルアドレナリンを開始する
③発熱のない敗血症にも注意が必要である(BT≦36.5の敗血症は死亡率が約2.8倍)
Points
・早期診断と早期治療が重要!!(来院後1時間以内に抗菌薬投与)
・抗生剤使用に関して、臓器の推定は「広く、広く」とっておく。否定する証拠が出るまでは疑い続ける。
・原因不明のショックをみたら敗血症性ショックを疑う。
・発熱時の危険因子:高齢者、進行悪性腫瘍、糖尿病、腎不全、慢性肝障害、脳血管障害、解熱鎮痛薬や副腎皮質ホルモン投与時
敗血症は、感染症に対する制御不能な宿主反応により生じた生命を脅かす臓器障害と定義される。
敗血症の診断基準は、quick SOFA scoreが2点以上+臓器障害(SOFAscoreが2点以上)を満たすものとされる。
敗血症の死亡率は40%と非常に高く (2006.Crit Care Med.)、感染源として肺炎、胆道感染症、尿路感染症が多い。
これに血流感染や腸管感染を併せると感染源の約80%を占める。
しかし16%は原因不明という報告もあり、その感染源の把握およびマネージメントに難渋することも多い。
発熱、意識障害、血圧低下など
quick SOFA scoreの3項目中2項目以上満たすとき、敗血症を疑う。
①呼吸回数が22回/min以上
②精神状態の変化
③収縮期血圧100mmHg未満
以下の項目をすべて満たす場合、敗血症性ショックを疑う。
①敗血症の診断基準を満たす
②十分な輸液後もMAP(平均血圧)≧65mmHgを保つために血管作動薬が必要
③血清乳酸値≧2mmol/L(18mg/dl)であるとき
その他のショック(Hypovolemic, Obstructive, Cardiogenic, Anaphylactic)
医療面接
詳細な問診と診察での感染フォーカスを検索する。
易感染性(DM、脾臓摘出後、担癌状態、抗がん剤使用、ステロイド使用)の確認
診察
感染源を特定するために全身をくまなく診察する。
血液検査:CBC、肝機能、腎機能、電解質、血糖、CRP、凝固(PT、APTT、FDP)
各種培養:血液培養2セット、痰培養、尿培養
各種スメア:痰や尿のスメアを行い、起因菌を推定し抗菌薬の選択に役立てる
腹部エコー:特に胆道系・腎盂の確認を行い、尿路感染症や胆道感染症を確認する
心エコー:IEを疑う場合や、その他のショックの鑑別を行う
胸部Xp:肺炎の有無を確認する
全身CT:熱源が同定できない場合に考慮する(造影も考慮)
腰椎穿刺:髄膜炎が疑われる場合に考慮する
※ER到着から敗血症と診断して抗菌薬投与開始するまでの目標時間は「60分」
①細胞外液全開投与(ショック状態の場合)
20G以上で末梢2本のライン確保
②抗菌薬
ショックではない敗血症なら、CTRX 2g or ABPC/SBT 3gを考慮
敗血症性ショックなら、MEPM 1g ± VCM 1gを考慮
(感染源が不明な場合や血流感染が疑われる場合にVCMの併用を考慮する)
③ノルアドレナリン(十分な輸液(30mL/kg以上)に反応しない低血圧の場合)
組成:ノルアドレナリン2A(1mg/1mL/A) + 生食48mL
用量:0.03γ(約2mL/hr)から開始
④サクシゾン®(ノルアドレナリンを使用する症例の場合)
ノルアドレナリン高用量(0.2γ以上)を使用する症例では、『相対的副腎不全』を考慮する。
静注:サクシゾン® 100mg(100mg/2mL/A) iv
持注:サクシゾン® 200mg(200mg/4mL/2A) + 生食44mL div(2mL/hr)
※最近の論文でも、ステロイド投与を推奨する論文と推奨しない論文があり、意見が一致しないことに注意。
⑤バソプレシン(ピトレシン®)
ノルアドレナリン高用量(0.2γ以上)使用しても昇圧困難な場合にバソプレシンを併用考慮する。
組成:ピトレシン®5A(20単位/1mL/A) + 生食45mL 0.5〜3mL/hr(※2単位/1mL)
用量:0.03U/min(約1mL/hr)から開始(増減幅の目安:0.5〜3mL/hr)
ビタミンB1/ビタミンC
ショックに対するビタミン補充療法が注目されつつある。ただし、まだコンセンサスは得られていない。
・ビタミンB1:チアミン 200mg×2/day or ビタメジン®2A×2/day(4日間〜ICU退室まで)
・ビタミンC:アスコルビン酸 1.5g×4/day(4日間〜ICU退室まで)
よく分からないショック症例では、脚気などを考慮し、上記をメインに混注してみるのも1つの方法。
(参考:Chest. 2017 Jun;151(6):1229-1238.)
CV(中心静脈)カテーテル挿入の適応
①末梢静脈確保が困難
②作用や毒性の強い薬剤(高用量カテコラミンなど)の使用
③高カロリー輸液の投与
④中心静脈圧の測定
入院し重症病棟での管理が必要。
敗血症・敗血症性ショックを疑った時点で、上級医にコンサルトが必要。
血培2セット採取し、速やかに抗生剤を投与することが最も重要な対応である!
外科的処置が必要なときは、各科にコンサルト行う(このとき、血液検査で血液型・感染症の項目を確認する必要あり)。
例)壊死性筋膜炎:形成外科callで緊急Ope
フルニエ壊疽:外科callで緊急Ope
閉塞性化膿性胆管炎:消化器内科callで緊急ERCP
閉塞性腎盂腎炎:泌尿器科callで緊急D-Jステント留置or腎瘻形成
ある程度のフォーカスの見当をつけて組織移行性のよい抗生剤、比較的スペクトルの広い抗生剤を選択する必要がある。
初療でMEPM+VCMから治療開始したとしても、培養結果を確認し、後日de-escalationすることが重要である。
また、DICを合併しているか否かを『急性期DIC診断基準』などで評価する。