閉塞性ショック
①緊張性気胸を疑ったら、胸部Xp撮影前に緊急脱気(胸腔穿刺)を行う
②心タンポナーデを疑ったら、大動脈解離の合併を除外する
③ショック状態の肺塞栓症では、PCPS導入が考慮されるため迅速にコンサルトを行う
何らかの原因によって血管が閉塞されることにより心拍出量が低下し、酸素の需要供給の不均衡を起こす急性全身性循環不全。
具体的には、緊張性気胸、心タンポナーデ、肺塞栓などがある。
閉塞性ショックなら原因を迅速に解明し、直ちに閉塞を解除しなければ数分で患者を失う超緊急疾患!
血圧低下、意識障害、胸痛、呼吸困難、失神など
ショックバイタル(Shock Index=HR/SBP>1)、ショックの5Psの所見に注意。
頻呼吸は肺塞栓の重要なサイン。発熱を伴う肺塞栓もある。
その他のショック(Septic, Hypovolemic, Cardiogenic, Anaphylactic)
ショック+心嚢液貯留は、大動脈解離による心タンポナーデも鑑別に挙げる!
<緊張性気胸>
医療面接
気管支喘息、COPD、胸部外傷の既往の有無
診察
気管の健側偏位、皮下気腫、頸静脈怒張、患側の呼吸音減弱・鼓音、陽圧換気でバッグが硬いなど
※挿管やCV挿入などの処置に伴う医原性緊張性気胸にも注意!!
<心タンポナーデ>
医療面接
胸背部痛の有無(大動脈解離は急性心筋梗塞・心タンポナーデ・大動脈弁閉鎖不全症を合併しうる)、外傷の既往
診察
Beckの三徴(血圧低下、頸静脈怒張、心音減弱)が揃うことは稀!
※エコーで心嚢液貯留がないかを迅速に確認することが重要!
<肺塞栓>
医療面接
息切れ、失神、胸背部痛、喀血の有無、妊娠や出産、長期臥床・下肢DVT・最近の手術歴の有無、血栓傾向を示す疾患の有無など
診察
下腿浮腫・Homans徴候の有無
心エコー:心嚢液貯留・D-shapeなどの右心負荷所見の有無を確認
血液検査:CBC、生化、凝固、血液ガス ※特にDダイマーは肺塞栓の鑑別に有用
胸部Xp:気胸の所見、心拡大、左第2弓の突出を確認 ※緊張性気胸は胸部Xp撮影前に診断すべし!
その他:心電図、下肢DVTエコー、胸部単純・造影CT(±下肢造影CT)
Well’s Criteria
肺塞栓症の発症確率を予測するスコア
2点以下 低危険群(3.6%)
3〜6点 中等度危険群(20.5%)
6点以上 高危険群(66.7%)
低危険群ならDダイマー測定へ(感度95%、特異度44%:陰性なら肺塞栓の可能性は低い)
中等度以上の危険群なら単純・造影CTへ(DVTの検査も含めて撮影範囲を下肢まで検討)
肺エコー
【気胸のMモード所見】
・seashore sign 陰性(bar cord sign 陽性)
・lung point 陽性(肺実質部分と気胸部分の境目の像)
【正常のMモード所見】
・lung sliding 陽性(胸膜の水平移動の所見)
・lung pulse 陽性(胸膜の心臓の動きに伴った拍動の所見)
・sea shore sign 陽性
・power sliding 陽性(胸膜の水平移動の所見) ※これだけカラードップラー所見!
緊張性気胸
・胸腔穿刺:第2肋間鎖骨中線上(第3肋骨上縁)に18Gを刺す
・胸腔ドレナージ:胸腔ドレーンチューブ(28~32Fr)を乳頭線の高さ(第4~5肋間)の中腋窩線上に挿入
心タンポナーデ
・心嚢穿刺:剣状突起左縁と左肋骨弓との交点(Larry点)から穿刺し血液を吸引する
※穿刺方向:正中から約45°左側(左肩方向)、胸壁から約45°の角度
・大動脈解離を合併している場合、大動脈解離の治療が優先される場合もあるため、まずは上級医・心臓血管外科にcall
・心停止時やその一歩手前の状況では、上級医と相談した上で、心嚢穿刺を考慮
肺塞栓
・抗凝固療法:ヘパリンNa静注(80U/kg:体重60kgで約5000U/5mL)
ヘパリンNa持注(18U/kg:体重60kgで約5mL/hr)
・血栓溶解療法・PCPS:上級医や循環器内科にコンサルトし方針を決定する
※ショック状態の肺塞栓症では、PCPS導入が考慮されるため迅速にコンサルトを行う必要がある!
ヘパリン持続静注
組成例:ヘパリンNa10000U+生食40mL(Total 50mL:200U/mL)
目標:APTT 60~80(正常値の1.5~2.5倍)
中止:ワルファリンでPT-INRがコントロールでき次第ヘパリン持注中止
原則入院
・ショック時のSpO2の値はあてにならない
・ショックの鑑別に心エコーは非常に有用である(閉塞性ショックの鑑別にも有用)
・緊張性気胸であれば、胸部Xp撮影前に緊急脱気(胸腔穿刺)を行う