頻脈
①頻脈を認めたら、すぐに心電図をとり不整脈の有無を認識する
②PSVTを疑ったら、Valsalva手技やATP静注を考慮する
③Pafを疑ったら、心機能に問題なければワソラン静注を考慮する
頻脈は心拍数100以上と定義されており、心拍数150以上では緊急性が高いため治療介入が必要である。
頻脈は緊急性を判断し、心電図を正確に判読する能力と薬剤を適切に使用する力が求められる。
薬剤の選択で迷うことがあれば、上級医に相談したり専科にコンサルトして対応する。
動悸(最多)、脈が飛ぶ、めまい、失神、胸部不快感、胸痛、息切れ、呼吸困難
症状の有無もGeneralも様々である。
バイタルに注目し、血圧低下など血行動態が崩れている頻脈は緊急事態!
①不整脈:洞性頻脈、心房細動、心房粗動、心房頻拍、PSVT(AVNRT/AVRT)、VT、Vf、Psuedo-VT(Af+WPW症候群)、Torsade de Pointes
②心疾患:急性心不全、虚血性心疾患など
③内分泌系:甲状腺機能亢進症、副腎クリーゼ、褐色細胞腫など
④その他:貧血、薬剤性(例:シロスタゾール、テオフィリン)、カフェイン中毒など
医療面接
動悸のonset・性状(規則的or不規則、持続時間)
誘発因子(安静時or労作時、ストレス、動悸が出現する時間帯など)
随伴症状(浮動感、胸痛、呼吸困難感、蒼白、冷汗、失神感、血便・黒色便)
薬剤歴の聴取(例:シロスタゾール、テオフィリン、β刺激薬、カフェイン)
普段の血圧・心拍数
※Pafの場合、CHADS2スコアやPafの既往も要確認!
診察
眼瞼結膜の貧血(消化管出血を疑う所見あれば直腸診を行う)
甲状腺の診察(硬さ、可動性、腫大、痛みなど)
心雑音の有無
脱水所見の有無(粘膜乾燥・皮膚乾燥・ツルゴールの低下など)
CHADS2スコア
心房細動患者の脳卒中リスク評価スコア。
1点なら経口抗凝固薬の投与を考慮、2点以上なら経口抗凝固薬の投与が推奨される。
・CHF(心不全)1点
・HT(高血圧)1点
・Age(75歳以上)1点
・DM(糖尿病)1点
・Stroke/TIA(脳血管障害/TIA既往)2点
※日本語で『ことしの七五三』(高血圧・糖尿病・心不全・脳血管障害・75歳)という覚え方もある!
心電図:不整脈の判断
胸部Xp:肺うっ血・心拡大の有無(心不全などを合併していないか確認)
血液検査:CBC、生化、凝固、CK-MB、TropI、NT-proBNP
※入院後、必要なら甲状腺(TSH、FT4)などの各種ホルモンも確認する。
心エコー:薬剤使用前のEF、血栓の有無(Pafの場合)
※頻脈時はpoor-studyになるので、HRが低下してから再度評価する。
①血行動態の確認
・血行動態良好→心電図、心エコー
・血行動態不良→心電図、カルディオバージョンの準備、循環器内科コール
②不整脈の治療
PSVT
ⅰ)Valsalva手技 or 修正Valsava手技
ⅱ)ATP(20mg/2mL/1A) 0.5〜1.0A iv ※ATP急速静注後に生食20mLで後押し必要!
Paf
ⅰ)心機能良好:ワソラン®(5mg/2mL/1A)1A+生食100mL div(5分)
心機能低下:循環器内科コール→入院(オノアクト®やアミオダロン®を使用する場合が多い)
ⅱ)ワソラン®無効:ジルチアゼム(50mg/V)3V+生食50mL div(1〜3γ)→入院
VT(脈あり)+shock vital
ミダゾラム3〜5mg/イソゾール®2〜4mLで鎮静後、カルディオバージョン(50〜150J:二相性)
※抗不整脈の選択に迷ったら、無難な薬剤を使うか循環器内科にコンサルトする。
※無理に使ったことのない抗不整脈薬は使用しない!
カルディオバージョン
操作のポイントは以下の3点。
①除細動器のモニターを装着
②同期ボタン
③ショックボタン長押し
VT・Afなら100Jから開始。PSVT・AFLなら50Jから開始。
・心室性の頻脈や、器質的異常、来院時にバイタルの異常が認められるような場合には原則入院。
・上室性頻脈でバイタルに問題なく、虚血もなく頻脈が止まれば帰宅可能
・頻脈性不整脈(洞性頻脈を除く)の場合、後日循環器内科の外来を受診してもらう。
※外来予約時の血液検査でTHS・FT4も追加。Pafなら他科診でCHADS2スコアも言及。
・PSVTならワソラン®40mg 1T×3回分(動悸時)を処方。
・Sinusに戻ったPafなら心臓・腎臓に問題がないことを確認後にサンリズム®50mg 1CP×3回分(動悸時)を処方。
・循環動態の保たれていない頻脈は緊急カテの可能性があるため、迅速に循環器内科コンサルトを行う。
・抗不整脈の選択に迷えば循環器内科コンサルトし相談する。