胆石発作・胆嚢炎・胆管炎

要点

  ①症状、血液検査、画像所見から胆嚢炎・胆管炎を診断する
  ②胆嚢炎はエコー、胆管炎はCTが画像診断に有用である
  ③鎮痛剤で疼痛が消失した胆石発作はNSAIDs頓用処方し外科外来紹介可

Points
・胆石発作・胆嚢炎は消化器外科、胆管炎は消化器内科にコンサルトする。
・壊疽性胆嚢炎、急性閉塞性化膿性胆管炎などの致死的な合併症をきたすこともあるので注意!
胆道感染症(特に胆管炎)は、敗血症を引き起こしうることを理解する。

総論

胆石は胆道系に形成された結石で、疝痛発作や胆嚢炎、胆管炎などの胆道感染症を引き起こす。
また無石性胆嚢炎も胆嚢炎の5-10%を占め、胆汁うっ滞をきたす絶食時やADLが低下した重症患者で多い。

胆石リスク因子
胆石のリスクファクターとして4Fが有名。
・Female(女性)
・Forties(40代)
・Fatty(肥満)
・Fertile(多産)

主訴

発熱、右季肋部痛、心窩部痛、悪心・嘔吐、右肩・背部放散痛など

Charcot三徴/Reynolds五徴
『Charcot三徴』は、急性胆管炎の3つの特徴。
 1.発熱、悪寒
 2.右上腹部通
 3.黄疸
上記3項目に「意識障害」と「ショック」を加えたものが『Reynolds五徴』。

General & Vital signs

感染症によるバイタルの変化に注意(発熱、頻脈、頻呼吸、血圧低下など)!
ショックや意識障害を伴えば、急性胆管炎、急性閉塞性化膿性胆管炎を考慮する。

鑑別疾患

心血管系:急性心筋梗塞、狭心症、大動脈解離など
消化管 :胃・十二指腸潰瘍、上部消化管穿孔、腸閉塞、虫垂炎など
肝胆膵 :肝膿瘍、急性膵炎、胆嚢癌など

医療面接・診察

医療面接
  痛みのOPQRST(例:胆石発作の典型は、食後数時間持続する右季肋部痛)
  既往歴(胆摘の有無、胃の手術歴と再建法、胆石の有無)、食生活など
診察
  Murphy徴候、sonographic Murphy sign(エコーで胆嚢を確認しながらMurphy徴候を確認)、
  右季肋部痛、心窩部痛、腹膜刺激症状や反跳痛
  (胆嚢と腹膜の位置関係によるため重症度に相関しない!)

検査

血液検査:CBC、肝酵素(T-Bil、D-Bil、AST、ALT)、胆道系酵素(ALP、γ-GTP)、腎機能、
     リパーゼ、CRP、LDH、凝固(PT、APTT)、血型・感染症
血液培養:悪寒戦慄を伴う発熱、ショックバイタルの場合、迅速に血培を採取し抗菌薬投与へ
腹部エコー:胆嚢炎は腹部エコーが最も有用胆嚢腫大:長径8mm以上、短径4mm以上、壁厚3mm以上
      胆石の有無、胆管拡張の評価(総胆管拡張:7mm以上で軽度拡張、11mm以上で明らかな拡張
腹部CT:単純・造影(二相:動脈相、門脈相)で撮影する ※結石を評価するために単純CTの撮影も必要!
     胆管炎はCTが最も有用(単純CTで総胆管結石の評価、造影CTもで脂肪織濃度の評価)

治療

①疼痛コントロール
 ・NSAIDs内服:鎮痛効果+胆嚢炎発症抑制効果あり
 ・ソセゴン® 15mg/A 0.5A~1A iv ※胆石発作に対して、ブスコパン® 20mg/1mL/A 0.5〜1A ivも有効
②抗菌薬
 ・軽症 :CMZ(セフメタゾール) 1〜2g 1日4回
      ABPC/SBT(スルバクシン®) 1.5〜3g 1日4回
 ・中等症:CPZ/SBT(セフォセフ®) 1〜2g 1日2 回
 ・重症 :MEPM(メロペン®) 0.5〜1g 1日3回
      PIPC/TAZ(ゾシン®) 4.5g 1日3〜4回
③絶食・輸液
④根本治療
 ・胆嚢炎:緊急手術、PTGBD(経皮的胆嚢ドレナージ)など
 ・胆管炎:ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)、PTBD(経皮経肝胆道ドレナージ)など

Discharge or Admission Criteria

感染や総胆管閉塞を合併しておらず、鎮痛剤で疼痛が消失した胆石発作はNSAIDs頓用処方し外科外来紹介で帰宅可能。
ただし、発熱時はすぐ救急外来を受診するように説明してから帰宅させること
胆嚢炎・疼痛コントロール不良の胆石発作は消化器外科入院、胆管炎は消化器内科入院。

コンサルト

・胆嚢炎:血液検査と腹部エコーをもとに、消化器外科にコンサルト。
     緊急手術の適応を検討してもらう。
・胆管炎:血液検査と腹部CTをもとに、消化器内科へコンサルト(ただし術後胆管炎の場合、外科にコンサルト)。
     緊急ERCPの適応を検討してもらう。

診療上のポイント・アドバイス

症状(心窩部痛、右季肋部痛など)、血液検査、画像所見(胆嚢炎はエコー、胆管炎はCT)の3項目を根拠に
胆嚢炎や胆管炎を診断する。ただし、ERCP等を行わないと診断が難しい場合もあることも理解する。
コミュニケーションの取れない患者の発熱では胆嚢炎を必ず鑑別に入れること。
また敗血症性ショックの原因として、急性化膿性胆管炎も鑑別に挙げること。

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