脳梗塞

要点

  ①最終未発症時刻・t-PA禁忌項目を確認し、t-PA適応を検討する。
  ②脳梗塞を疑ったら、必ず大動脈解離を除外する!(とくに左麻痺の場合)
  ③t-PA適応があれば、頭部CT・胸部Xpで脳出血・大動脈解離を否定した後にt-PA投与!

Points
・最終未発症時刻が4.5時間以内であれば、t-PA療法の適応を検討する。
・最終未発症時刻と発症時刻が一致するとは限らないことに注意する。
左片麻痺を認める場合、大動脈解離の可能性を考慮し必ず除外してからt-PA投与を行う。

総論

何らかの原因で脳動脈が閉塞し、その灌流域が虚血となり、組織が壊死・融解し空洞化に至る病態が脳梗塞である。
脳梗塞に至る主な原因は、アテローム性・心原性・ラクナ性に大きく分類される。
特殊な脳梗塞として、分枝粥腫型梗塞(BAD:Branch atheromatous disease)などもある。
BADはアテローム性脳梗塞の一種で、治療抵抗性があり進行性に増悪するリスクが高い。

主訴

片麻痺、構音障害、口角下垂、眩暈、痺れ、意識障害など

General & Vital signs

ラクナ梗塞は比較的症状が軽いことが多く、心原性脳梗塞は意識障害などの重篤な症状になる場合が多い。
また、脳梗塞は基本的に血圧上昇する。
血圧が低い場合、大動脈解離など他疾患の検討がより重要になる。
※大動脈解離の可能性を下げるために、血圧左右差を確認すべし!

鑑別疾患

低血糖(意識障害の場合、最初に確認すべき疾患!)
頭蓋内病変(脳出血、クモ膜下出血、急性硬膜外血腫、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍など)
神経筋疾患(ギラン・バレー症候群、薬剤による筋疾患、PM/DM、筋ジストロフィーなど)
電解質異常(低K血症、低Mg血症など)

医療面接・診察

医療面接
  最終未発症時刻(※発症時刻と一致しない場合もあることに注意)
  t-PAチェックリスト項目(とくに禁忌事項がないかを要確認)
  既往歴(Af患者は心原性脳梗塞の可能性が高まる)
  内服薬(抗血小板薬、抗凝固薬、糖尿病薬など)
  リスクファクター(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙歴、家族歴)
診察
  片麻痺、意識レベル、瞳孔の確認
  NIHSSスコア(5〜24点でt-PA適応の可能性あり)
  頸動脈雑音の有無

t-PAチェックリスト
t-PAチェックリスト

NIHSS
NIHSS

検査

簡易血糖:意識障害精査の1st stepは低血糖の除外
血液検査:CBC、生化、凝固(PT、APTT、TAT、Dダイマー)、血液ガス
頸動脈エコー・心エコー:大動脈解離を除外する(例:flap、心タンポナーデ、AR、壁運動低下)
頭部CT/MRI:t-PA適応であれば頭部CT、t-PA適応外であれば頭部MRIが優先
胸部Xp:t-PA適応であれば頭部CT撮影後にそのまま胸部Xp撮影し大動脈解離を否定する
※t-PA適応の場合、頭部CT撮影後にt-PA投与開始し、頭部MRI撮像へ

early CT sign
頭部CTで急性期脳梗塞を疑う所見。
・皮髄境界消失
・レンズ核の不明瞭化
・脳溝の狭小化
hyperdense MCA sign(中大脳動脈に血栓反映した高信号領域)など

頭部MRI
・脳梗塞はDWIで高信号、ADC mapで低信号
・脳出血はDWIで高信号、T2*で低信号

治療

①降圧
  静注:ペルジピン®(2mg/2mL/A) 0.5〜1.0A iv
  持注:ニスタジール®(10mg/10mL/A)5A + 生食50mL 2mL/hrから開始(最大30mL/hr)
②降圧目標
  t-PA施行~24h後: SBP<180mmHgかつDBP<105mmHg
  t-PA適応外:発症2週間後まではSBP<220mmHgまたはDBP<120mmHg
③t-PA治療
  グルトパ® 体重に応じて投与量が異なるため添付文書要確認(必ず専門医にコンサルトし厳格に適応を守ること)

④病態別治療
ラクナ梗塞・アテローム性脳梗塞
   注射例:エダラボン® 1KT(100mL) div(30分) 1日2回(4〜14日間)
        ・腎機能障害(Cre>1.5mg/dL)がある場合禁忌
        ・発症24時間以上経過している場合は適応なし
       アルガトロバン(10mg/20mL/A)6A+生食360mL div(20mL/hr) 1日1回(3日間)
        ・発症後48時間以上経過している場合や症状が固定している場合は適応なし
   内服例:バイアスピリン100mg 1錠 (入院後:バイアスピリン100mg 2錠分2)
       プラビックス75mg 1錠 (入院後:プラビックス75mg 1錠分1)
       シロスタゾール100mg 1錠 (入院後:シロスタゾール50mg 2錠分2)
       ファモチジン20mg 1錠 (入院後:ファモチジン20mg 2錠分2)
心原性脳梗塞
   注射例:エダラボン® 1KT(100mL) div(30分) 1日2回(4〜14日間)
        ・腎機能障害(Cre>1.5mg/dL)がある場合禁忌
        ・発症24時間以上経過している場合は適応なし
       ヘパリンNa(1万単位/10mL)12mL + 生食36mL 2mL/hr div(2mL/hr)
        ※広範囲脳梗塞で出血リスクが高い場合は、ヘパリン投与を行わない場合あり(要相談)
   内服例:ワーファリン®1mg 3錠分1
        ※DOACを代わりに内服させる場合もあるため、確認してから内服させること
        ※ワーファリン®もDOACも内服禁忌の場合、代替薬としてアスピリンなどの抗血小板薬を検討する
   血管内治療:発症6時間以内の心原性脳梗塞の場合、MCA(M2領域)に血栓を認めればカテーテル治療へ

Discharge or Admission Criteria

原則、入院加療。

診療上のポイント・アドバイス

t-PA適応の場合は、脳出血や大動脈解離を除外したら直ちに神経内科or脳神経外科にコンサルト。
神経内科のオンコール日で血管内治療の可能性がある場合は、脳神経外科への連絡も必要になる。
<伝えるべき情報>
年齢・性別・最終未発症確認時刻・意識レベル(JCS)・血圧・麻痺の有無・ADL・心疾患(例:Af、弁膜症)の有無

TIA(一過性脳虚血発作)
定義:局所の脳・脊髄・網膜の虚血によって惹起される急性梗塞に至らない一過性の局所神経障害。
症状:一過性(多くは2〜15分)の半身麻痺(運動障害、感覚障害)・失語・構音障害・黒内障など
検査:頭部MRIを含めて異常所見なし
評価:ABCD2スコアでリスク評価
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対応:低リスク(0〜3点)→外来フォロー検討
   中リスク(4〜5点)→経過観察入院検討
   高リスク(6〜7点)→治療検討(バイアスピリン100mg 1錠+ファモチジン20mg 1錠)
※TIAは基本的に専門医にコンサルトし帰宅・入院を判断する。
帰宅させる場合、麻痺・脱力・構音障害など「何かおかしい」と思ったらすぐに受診するよう説明する。
夜間の場合は、ER stayしていただき翌朝に頭部MRI撮像後にコンサルトするのもよい。

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