低K血症

要点

  ①低K血症の原因精査のために、血中Mg・尿中K・尿中Cl・血液ガスを確認する。
  ②低K血症の薬剤性の原因として、漢方(甘草含むもの)・ループ利尿薬を確認する。
  ③末梢ラインからの低K補正は、生食(500mL)1本+KCL(20mEq/20mL) 1KTを早くて1時間で投与!

Points
K<2.5mmol/lや低K血症に伴う不整薬・重篤な筋症状を認める場合は点滴でK補正が必要。
軽度の低K血症で症状を伴わないものは、内服のK補正だけで十分である。

総論

血中K濃度は上がりにくいため、点滴や内服での補正が長期化する可能性がある。
『血清K1mEqの低下=体全体150mEqの低下』であり、血中K濃度低下を代償するために細胞内K濃度も低下している。
したがって、K補充は十分に行う必要がある。

主訴

神経・筋症状(全身倦怠感、痺れ、麻痺性イレウス、筋肉痛、脱力、腱反射消失、筋力低下、呼吸筋麻痺、横紋筋融解)、
致死的不整脈、ジギタリス中毒、肝不全など
※低K血症ではアンモニア産生促進されるため、肝不全患者には注意が必要!

General & Vital signs

全身状態は無症候性から心停止まで様々である。
不整脈出現に注意が必要。モニター波形の異常(QT延長・U波出現→陰性T波・ST低下)に気付けるとよい。

医療面接・診察

医療面接
  嘔吐、下痢、食事摂取量の確認
  内服薬(利尿薬、漢方など)
  既往歴(高血圧、糖尿病の有無など)

検査

心電図:QT延長、U波出現、陰性T波、ST低下などの心電図変化の有無を確認
血液ガス:代謝性アルカローシスの有無を確認(代謝性アシドーシスならRTAやDKAを疑う)
血液検査:CBC、電解質、腎機能、肝機能など ※血中Mgの測定を忘れない!
    (入院後、詳細な原因精査のために、血中レニン・アルドステロンを測定する場合あり)
尿検査:尿中K濃度

低Mg血症
Mgの欠乏により尿中へのK排泄が促進される。低K血症を見たら必ずMgを確認すること。
低Mg血症を合併した状態でK補充を行ってもKは上昇しないため同時並行でKとMgを補充する。

治療

①内服治療
 ・スローケ®600mg 2〜4T/2x(朝夕食後)
 ・KCL 2〜10g/2〜3x ※内服困難な胃瘻やNG留置患者
②点滴治療
 ・末梢静脈:生理食塩水500mL + KCL(20mEq/20mL/KT)1KT 1時間「以上」かけて投与
 ・中心静脈:生理食塩水20mL + KCL(20mEq/20mL/KT)1KT 1時間「以上」かけて投与
 ※1時間「以上」かけて投与後、血液ガスフォローが必要(頻回のフォローが必要な場合、A-line留置を考慮)
 ※低K補正には大量のK投与が必要な場合が多いため、高度の低K血症の場合CV挿入を検討する。

診療上のポイント・アドバイス

低K血症を認めた場合、K補充を行うだけでなくKが低下した原因を追求する必要がある。
偽性低K血症の除外(インスリン投与・β2刺激薬・アルカローシス)した上で、次のStepで原因を検索する。
 ①問診:嘔吐・下痢などの病歴の有無、漢方や利尿薬の内服の有無
 ②血中Mg:まずは低Mg血症による低K血症を除外する(同時にMgとKの補正を行う)
 ③尿中K:尿中K<20mEq/Lなら腎外性K喪失(嘔吐、下痢、摂取不足)
      尿中K>20mEq/Lなら腎性K喪失の疑い→④へ
 ④血液ガス:代謝性アシドーシスならRTAやDKAの精査が必要
       代謝性アルカローシスなら利尿薬・高血圧の有無と尿中Clを確認→⑤へ
 ⑤尿中Cl:尿中Cl<20mEq/lなら脱水傾向(嘔吐、利尿薬の影響)
      尿中Cl>20mEq/lならレニン・アルドステロン等の精査が必要→入院後精査

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