眼科救急
①眼化学外傷はとにかく生理食塩水で洗浄し、すぐに眼科コンサルト!
②急性緑内障発作は縮瞳薬+利尿薬による治療が基本!
③点眼麻酔薬(ベノキシール®)は原則として処方しない!
Points
失明に繋がる疾患を早期に認識する、眼科紹介までの猶予時間を把握する!
超緊急(数分以内に介入):眼化学外傷(特にアルカリ物質)、網膜中心動脈閉塞症(CRAO)
緊急(数時間以内に介入):急性緑内障発作、眼球開放創、眼球打撲、外傷性視神経症・眼窩コンパートメント症候群、
眼瞼裂傷(涙小管断裂が疑われる内眼角の場合はより急ぐ)、前房出血、急性硝子体出血、
細菌性眼内炎、眼窩蜂巣炎、細菌性角膜炎、淋菌性結膜炎、海綿静脈洞血栓症、虚血性視神経症
準緊急(数日以内に介入):角膜損傷、網膜剥離、眼窩吹き抜け骨折(小児は緊急の場合あり)
視力低下(急激な進行は危険)、視野欠損、充血、眼痛、眼掻痒感、眼脂、眼球打撲
例:「急に目が見えなくなった」、「目が赤い」、「目が痛い」、「○○が当たって、見えなくなった」、
「目が痛い」、「ぼやけて見える」、「何かが飛んできて目に入った」
損傷の概観、視力低下の程度、進行のスピード、対光反射の有無は速やかに確認。
外傷性の場合は頭蓋内、脊髄、気道など生命に関わる部位の異常にも注意する。
外傷性 :眼化学外傷、穿通性眼外傷、眼球破裂、眼窩吹き抜け骨折、角膜損傷、角結膜異物、
紫外線性角膜炎、前房出血、水晶体脱臼
非外傷性:網膜中心動脈閉塞症、急性緑内障発作、網膜剥離、硝子体出血、眼内炎、ぶどう膜炎、
強膜炎、上強膜炎、結膜炎(アレルギー性、ウイルス性、淋菌性)、角膜炎(ヘルペス性、細菌性)、
結膜下出血、眼瞼炎、麦粒腫、眼部帯状疱疹、群発頭痛、川崎病
医療面接
・眼の外傷歴(化学外傷を含む)
・全身疾患の既往歴(膠原病・アレルギー)
・家族歴
・感染症歴(性感染症)
・内服歴
・自覚症状(霧視、虹視症、眼痛、頭痛、充血)
診察
・視力低下、視野障害、瞳孔・直接+間接対光反射(RAPD、Swinging Flashlight Test)、
充血の分布(毛様充血vs結膜充血)、角膜浮腫、前房出血、前房蓄膿(座位にしないと見逃す)
・眼球突出を伴う眼窩周囲の腫脹の有無→あれば眼窩コンパートメント症候群を疑う
・眼球異物突出(あればそのままにする)、硝子体脱出、変形した瞳孔、涙滴状の瞳孔、
眼窩内構造物の脱出のどれか1つでも該当→眼球開放創→診察や投薬は行わず眼帯で保護
(就学前の子供に対する片側眼帯は、視覚遮断性弱視を誘発する可能性があり避ける)
・緑内障を疑うとき、眼球の硬さを触診
視力検査:常に重要、急性の視力低下を伴う場合は緊急疾患である可能性が高い
眼球エコー:網膜剥離(Fig.1)、水晶体脱臼(Fig.2)を疑うとき
眼底検査(*):網膜中心動脈閉塞症(CRAO)(Fig.3)、網膜剥離、硝子体出血を疑うとき
細隙灯顕微鏡検査(*):角膜損傷(ヘルペス角膜炎、細菌性角膜炎、角膜異物、電気性眼炎)を疑うとき
眼圧検査(*):緑内障を疑うとき
CT検査:眼窩骨折、視神経管骨折を疑うとき
*疼痛で診察や洗浄が困難な場合はベノキシール®(角膜上皮の創傷治癒を遅らせるので処方はしない)で点眼麻酔を行う
・眼化学外傷:生理食塩水で洗浄(ウロペーパーでpHが中性になるまで継続)、緊急眼科紹介
・網膜中心動脈閉塞症(CRAO):疑ったら眼球マッサージ+ペーパーバック、緊急眼科紹介(治療は100分以内)
※tPAが有効な可能性あり
・急性原発閉塞隅角緑内障:20%マンニトール1.0-3.0g/kgを30分で点滴静注(1瓶300ml中60g)、
グリセオール300-500mlを60分で点滴静注、
1%/2%ピロカルピン(サンピロ®点眼液)を1時間に2-3回点眼
※眼圧正常化を確認できれば以下処方で翌日眼科受診
2%サンピロ®点眼液4回/day、0.5%チモプトール®点眼液2回/day、0.1%リンデロン®点眼液4回/day、
ダイアモックス®250mg2錠内服
・外傷性視神経症:ステロイドパルス、視神経管開放術、緊急眼科紹介
・角膜異物:クラビット®点眼液+タリビット®眼軟膏
(異物除去後が望ましいが眼科医でも困難なことがあり、無理せず早期に眼科紹介)
・電気性眼炎(紫外線障害後8-12時間で発症):タリビット®眼軟膏
・ウイルス性結膜炎:クラビット®点眼液(混合感染予防)+フルメトロン®点眼液(角膜混濁予防)
・細菌性結膜炎:ベストロン®点眼液/クラビット®点眼液(黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、淋菌を想定)