間質性肺炎
①患者の重症度を把握し、呼吸補助やステロイド大量投与の必要性を迅速に判断する
②自己免疫疾患や肺胞出血、肺塞栓の合併の有無を診察や検査所見で確認する
③免疫抑制状態の患者の場合、真菌感染症やサイトメガロウイルス感染症にも留意する
間質性肺疾患のうち原因不明(自己免疫疾患、薬剤、吸入抗原などに起因しないもの)を特発性間質性肺炎(IIP)と呼ぶ。
IIPは更に特発性肺線維症(IPF)や特発性非特異性間質性肺炎(NSIP)などに分類される。
通常、間質性肺炎の急性増悪はIPFやNSIPの急性増悪を指すことが多い。
呼吸困難、乾性咳嗽など
著しい低酸素状態、頻呼吸、発熱など
心不全、肺塞栓症、心原性肺水腫、肺炎、ARDSなど
医療面接
症状の出現時期と症状の経過
新たなサプリメントや薬剤、化学療法の有無
プレドニンや免疫抑制剤の使用の有無(日和見感染のリスクを確認)
普段の関節痛・筋肉痛、筋力低下、唇や眼の乾燥症状の有無(自己免疫疾患のリスクを確認)
血痰の有無(肺胞出血の場合、ANCAの精査やステロイドパルスが必要になる)
診察
crackleの聴取範囲、ばち指の有無、呼吸補助筋の発達・使用の有無
自己免疫疾患の所見(ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候、機械工の手、関節の腫脹・疼痛、末梢神経障害)
肺高血圧/肺性心の合併所見(ⅡPの亢進、心基部の吸気時に増強する全収縮期雑音、頸静脈怒張、下腿浮腫)
Johnson分類
wheezeの程度は以下の4つに分類される。
・GradeⅠ:強制呼気のみで聴取
・GradeⅡ:通常呼気で聴取
・GradeⅢ:呼気・吸気ともに聴取
・GradeⅣ:呼吸音減弱(Silent Chest)気管支喘息は通常polyphonicなwheezeであり、気道異物・腫瘤などは限局したmonophonic なwheezeを呈する。
また、1度のwheezeは強制呼気を促さないと聴取できない。
慢性咳嗽の原因として喘息によるものがあり、強制呼気でのwheezeの有無を評価することは重要である。
血液検査:CBC、血液像、肝機能、腎機能、CRP、NT-proBNP、LDH、KL-6、SP-D
※肺胞出血や肺塞栓を疑う場合、PT、APTT、D-ダイマーを追加
※免疫抑制状態の患者では、β-Dグルカン、CMV抗原(直接法)を追加
動脈血液ガス:低酸素血症の程度を評価
尿検査:尿定性、尿沈渣(※血尿・蛋白尿の有無を確認)、尿中抗原(肺炎球菌、レジオネラ)
各種培養:痰培養、抗酸菌培養、血液培養
胸部Xp、胸部CT:両側(時に片側)肺野のびまん性浸潤影の有無を確認
※スリガラス影なら急性経過の可能性が高い
症状が急に進行した時は、緊急で対応する必要性が高い。
症状が慢性の経過で少量酸素投与のみで呼吸が安定する際は、ステロイド投与は呼吸器内科にコンサルト後の判断でよい。
①酸素投与
酸素投与開始後は血液ガス(二酸化炭素分圧の確認は静脈ガスでも可)を適宜フォローする。
②ステロイド大量投与
ソル・メルコート® 1000mg + 生食 100mL div(1時間)
※画像所見のみならず、呼吸状態(本人の呼吸困難、努力呼吸の有無、SpO2、呼吸数)からステロイド大量投与の必要性を判断する。
③抗菌薬(感染症を完全に否定出来ない場合や、重症度も考慮し通常併用する場合が多い)
肺炎治療に準じて抗菌薬を選択する(肺炎のページ参照)。
④人工呼吸管理
NIVでの管理が困難(アシドーシスが改善しない、喀痰が多い)場合は気管挿管を考慮する。
設定はARDSに準ずる(1回換気量:6mL/kg)。
※元々間質性肺炎を指摘されている慢性呼吸不全患者では挿管、人工呼吸管理を慎重に判断する(挿管しても、抜管困難・救命困難になる可能性が高いことを家族や本人に説明する必要がある)。
NIVの適応
・気管支拡張薬の吸入で改善が乏しい呼吸困難
・著名な努力呼吸、明らかな呼吸筋疲労
・pH 7.35以下
・PaCO2≧45 torr
NIV導入時は、常に気管挿管の適応を念頭においておく。
基本的にERを受診した(症状がある)びまん性肺疾患の患者は、全例入院を原則とする。
間質性肺炎のその他の治療
●免疫抑制剤
ステロイド大量投与への反応性をみてから追加治療を検討する。
過去の画像所見から明らかに間質性肺炎急性増悪と診断可能で重症な場合に適応がある。
●リコモジュリン・PMX
現在臨床研究が進行中。いずれも現時点でルーチンでの使用は推奨されていない。