循環血液量減少性ショック

要点

  ①ショックの認知! 20G以上のライン2本確保&輸血考慮(血型・感染症の立ち会い採血)
  ②出血源の検索!  エコー&造影CT(動脈相・静脈相の2相)が出血源の同定に有用
  ③止血術の準備!  迅速に専門家コンサルトし根本治療(手術、内視鏡、IVRなど)へ

Points
【主な出血源】
 ①腹部(腹部大動脈瘤破裂、消化管出血、肝細胞癌破裂など)
 ②外傷(胸部・腹部・骨盤部からの出血など)
 ③体表面からの出血(開放骨折など)
 ④婦人科系(子宮外妊娠など)

総論

循環血液量減少性ショック、いわゆる“hypovolemic shock”とは、脱水や出血などによって体液量が減少し、酸素の需要供給の不均衡を起こすような急性全身性循環不全のことを言う。
原因として、まずは出血を念頭に動き始め出血の除外を行うことが重要である。
出血の可能性を否定できればその他の原因として脱水などを考慮して対応する。

主訴

気分不良、意識障害、意識消失、ふらつきなど

General & Vital signs

※ショック=バイタル異常+臓器障害
ⅰ)バイタル異常:
  ショックバイタル(Shock Index=HR/SBP>1)など
  ※SI≧1で約1L、SI≧2で約2Lの出血を想定する
ⅱ)臓器障害:
  脳血流低下→精神症状の出現(不穏、意識レベル低下など)
  腎血流低下→尿量減少(目標尿量≧0.5mL/kg/hr)
  末梢血低下→ショックの5Psの所見
スクリーンショット 2017-11-05 10.51.25

ショックの5Ps
・Pallor 顔面蒼白
・Perspiration 冷汗
・Prostration 虚脱(消耗しきった状態)
・Pulselessness 微弱な速脈
・Pulmonary insufficiency 呼吸促迫

鑑別疾患

その他のショック(Septic, Obstructive, Cardiogenic, Anaphylactic)
Hypovolemic shockの中でも、まず『出血か否か』を確認していくことが重要!

医療面接・診察

<出血性ショック>
医療面接
  ①消化管(消化管出血、食道静脈瘤、肝細胞癌破裂など)
      吐血、血便・黒色便、NSAIDs使用歴、抗血小板・抗凝固薬使用歴、消化器疾患(肝硬変、膵炎、消化性潰瘍など)の既往
  ②血管系(大動脈瘤破裂、大動脈解離など)
      胸痛、背部痛、腹痛、血管系リスク(高血圧、脂質異常症、喫煙、糖尿病、家族歴など)、血管系既往歴
  ③婦人科(子宮外妊娠、卵巣出血など)
      下腹部痛、妊娠の有無、月経の詳細(周期、出血量、普段との比較)
  ④外傷系(熱傷、骨折、腹腔内出血など)
      受傷機転の詳細
診察
  心雑音、腹部診察、直腸診など ※外傷は全身観察が重要!

<非出血性ショック(脱水など)>
医療面接
  食事摂取量・飲水量の状況、嘔吐・下痢の有無や程度、生活習慣
診察
  眼瞼結膜、舌や腋窩の乾燥、Turgor低下、CRT>2sec

検査

血液検査(CBC、生化、凝固(Fib含む)、血液ガス、血型、感染症)
 ※輸血を考慮するなら立ち会い採血が必要!間に合わない場合は、O型(+)を使用する。
尿検査(妊娠反応) ※妊娠可能性のある女性は必須!
エコー
 腹部:FAST、IVC評価、腹部大動脈、女性器
 心臓:右心系虚脱、心嚢液貯留、大動脈解離の有無、その他のショックの除外
 (例)女性+FAST陽性→子宮外妊娠など HCC既往+FAST陽性→HCC rupture
単純・造影CT(動脈相・静脈相)
 バイタル安定後にCT撮影を考慮。ルートは20G以上の太さが必要。
その他(心電図、胸部Xp、直腸診) ※高エネルギー外傷なら胸部Xp・骨盤Xpが必須

治療

①まずは、IV+O2+Monitor
 ・IV:最低でも20G以上の太いラインを2本以上確保 ※CV挿入も考慮
 ・O2:必ず酸素投与 ※酸素を運搬するHbが低下するため酸素投与は必須
 ・Monitor:心電図・血圧・SpO2測定、フォーリー留置(尿量測定) ※落ち着いたら必要に応じてA-line挿入
②大量輸液
 ・細胞外液(生理食塩水orリンゲル液など)を1〜2L全開投与 ※大量の場合加温輸液が良い
 ・バイタルの改善が無ければ(non-responder)、ボルベン®(HES製剤)・アルブミナー®(アルブミン製剤)・輸血を考慮
 ・外傷の輸血を準備する場合、RCC:FFP:PC=1:1:1(例:すべて10Uずつ)準備する
 ※細胞外液を入れすぎることで、凝固障害をきたすことがあるため、早期の輸血判断が重要!
③根本治療
 ・バイタル安定に努めながら、さらなる根本的な治療を行う。
 ・専門医へコンサルトし止血術施行(例:手術、内視鏡、IVR)

Discharge or Admission Criteria

原則入院

診療上のポイント・アドバイス

・ショックを認知した時点で、すぐに上級医にコンサルトをする。
・原因が判明したらすぐに専門医にコンサルとし、根本治療を急ぐ。
  →推測される出血部位・出血量、バイタルの経過、画像(エコー、CTなど)所見、輸液の反応性などを報告
・外傷性ショックの場合ほとんどが出血性ショックだが、閉塞性ショックなども無視しないこと。
・迅速なショックの認知と大量輸液・輸血が初期対応で最も重要なことを認識する。
・急性出血の場合、Hbが低下しないこともあるので油断しないこと。
・代償性ショック(頻脈・血圧正常)の段階でショックを認知し介入できるとよい。
・大量輸液に伴いHb低下を来しうることに注意。輸血目標はHb>8.0mg/dLである。

ページ上部へ戻る