腸閉塞

要点

  ①腹部所見+画像所見からイレウスを診断する!絞扼性イレウスは緊急手術の適応!
  ②CTで拡張した腸管を追ってcaliber changeを探し、closed loopの有無も確認する!
  ③小腸閉塞の原因として手術歴があれば癒着、大腸閉塞の原因として大腸癌が原因として多い!

Points
・血液検査で腸管壊死を示唆する所見を認めた時点では手遅れ!腹部所見+画像所見からイレウスを診断する!
・大腸イレウスはbacterial translocationにより腸内細菌が腸管外に移行する可能性あるため、
 敗血症性ショックに注意が必要。
・また吸収不良と侵襲による3rd spaceへ細胞外液が移動することで、循環血液量減少性ショックになりやすい!

総論

腸閉塞(イレウス)は「腸管内容の肛門側への輸送が障害されていることによって生ずる病態」と定義される。
病型・病因により機械的イレウスと機能的イレウスに大別される。
・機械的イレウス:血行障害のない単純性と、血行障害のある複雑性に分類。
・機能的イレウス:腸管が運動麻痺する麻痺性と、腸管が痙攣する痙攣性に分類。

主訴

腹痛、嘔気・嘔吐(黒色吐物)

General & Vital signs

Generalはsickな印象で来院することが多い。
敗血症性ショックや循環血液量減少性ショックに陥る場合もあり注意が必要。

鑑別疾患

小腸閉塞:手術歴があれば原因はほとんど癒着性(反復する癒着性イレウスは軽症のことも多い)
     手術歴がなければ原因は様々(例:外ヘルニア嵌頓、小腸腫瘍、異物、炎症性疾患、腸間膜血栓、腸重積)
     必ず身体診察時にヘルニアの有無を確認すること(ヘルニア嵌頓の場合は手術が必要)
大腸閉塞:大腸癌(70%)が最多!その他に、S状結腸捻転(10%)、憩室炎(5%)など

医療面接・診察

医療面接
  排便状況・放屁の有無(完全閉塞でも時に排便はあり、不完全閉塞では下痢になることも)
  既往歴(腸閉塞、心房細動、便秘症、外ヘルニア、精神科疾患など)
  手術歴(腹部手術歴があれば、その内容も確認)
  内服薬(抗精神病薬など)、アレルギー、家族歴(消化管悪性腫瘍など)
診察
  腹部所見(手術痕、腹部膨隆、腸蠕動音亢進or低下、metalic sound、鼓音、圧痛の有無など)
  腹膜刺激症状(反跳痛など)、鼠径部の診察(外ヘルニアの有無)
  直腸診(直腸における便の有無、直腸癌スクリーニング)

抗精神病薬
抗精神病薬は副作用として便秘を起こしやすい。便秘により腸管が拡大・拡張することで腸捻転しやすくなる。

検査

①スクリーニング検査
 腹部X線(立位と臥位):ニボー小腸閉塞3×3の法則(小腸ガス3つ以上、小腸径3cm以上、小腸壁3mm以上)の有無
②イレウスの疑いがある場合
 腹部CT:単純・造影(二相:動脈相+門脈相)で撮影する(腸間膜血栓性を除外するために動脈相も撮影
 血液検査:CBC、肝機能、腎機能、電解質、凝固、CRP、血液型、感染症
      ※WBC高値、AST、LDH、CKなどの上昇は腸管壊死を示唆する!
 血液ガス:代謝性アシドーシスの程度、Lacを確認

CTでの閉塞所見
①詰まる(beak sign、腫瘍・腸重積)
②嵌まる(ヘルニア)
③捻れる(closed loop)

【closed loop】
・C字型に広がった拡張した小腸
・近接する虚脱した2つ(口側と肛門側)の腸管
・whirl sign

<closed loopができる例>
スクリーンショット 2018-02-12 19.04.12
<closed loopとbeal sign>
スクリーンショット 2018-02-12 19.04.15
<CT画像>
スクリーンショット 2018-02-12 19.08.20
スクリーンショット 2018-02-12 19.08.25

腹部レントゲン
レントゲンは原則2方向であり、腹部Xpは立位・臥位の2方向が基本。
立位ではニボーを確認しやすく、臥位では局在を確認しやすい。
立位困難な場合、臥位だけでも小腸閉塞3×3の法則(小腸ガス3つ以上、小腸径3cm以上、小腸壁3mm以上)を認める場合はニボーを認めなくてもイレウスが疑わしくなる。

腸閉塞のCT診断
【小腸閉塞】
①小腸閉塞の所見
・小腸閉塞3×3の法則(小腸ガス3つ以上、小腸径3cm以上、小腸壁3mm以上)
②閉塞レベル
・拡張した腸管を追って、caliber changeの部位を検索
 ※caliber changeを認めるイレウスは機械性、caliber changeがないイレウスは麻痺性
・狭窄部位より肛門側も確認し、closed loopの有無を確認
 ※closed loopは絞扼性イレウスの可能性が高く緊急手術になり得る!
・肛門側腸管が完全に虚脱していれば完全閉塞、ある程度ガスと体液が残存していれば不完全閉塞
③血行障害
・造影CTの所見から血行障害の有無を評価

【大腸閉塞】
①解剖学的位置
・直腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸を同定
②閉塞レベル
・直腸より逆行性に口側へ、回盲部から順行性に腸管をたどり、虚脱腸管と拡張腸管の移行部位を同定
・盲腸の直径を確認し穿孔リスクを評価(盲腸径≧12cmで大腸穿孔のリスクが高い)

腸管虚血の画像所見
【腹部超音波検査】
 腸管蠕動運動消失、腹水貯留、拡張腸管壁の非薄化
 小腸ケルクリング襞の平坦化、腹水

【腹部造影CT】
 腸管壁(造影欠損・target sign、壁内血腫、壁内気腫)
 腸間膜(出血、うっ血)、門脈・上腸間膜静脈(ガス)、腹水

治療

①絶飲食・大量補液
 ・補液量は2500〜3000mL/dayが目安
②NGチューブ挿入
 ・胃などの上部消化管の拡張を認める場合、16〜18FrのNGチューブを挿入
 ・イレウス管の適応は消化器外科or消化器内科が判断
③鎮痛・制吐
 ・鎮痛:ソセゴン®(7.5mg/Aまたは15mg/A) 0.5〜1A静注
     ブスコパン®(20mg/1mL/A) 0.5〜1A静注
 ・制吐:機械的閉塞でないことを確認後、メトクロプラミド(10mg/2mL/A) 1A静注
④PPI(GERD予防目的)
 ・タケプロン30mg+生理食塩水20mL 1日2回
⑤抗生剤(大腸イレウスでbacterial translocationが考慮される場合など)
 ・軽症〜中等症:CMZ(セフメタゾール)1〜2g 1日4回
 ・重症:MEPM(メロペン®)0.5〜1g 1日3回

Discharge or Admission Criteria

原則入院

診療上のポイント・アドバイス

絞扼性イレウスは緊急手術の適応であり、診断したら迅速に消化器外科にコンサルトする。
イレウスは原則消化器外科にコンサルトするが、以下の場合は消化器内科にコンサルトする。

【消化器内科にコンサルトする例】
・S状結腸軸捻転(内視鏡的に軸捻転整復可能)
・十二指腸までの腸閉塞(例:胃癌や反復する胃潰瘍による幽門部閉塞)

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